エコタウン

菅総理が岩手県の陸前高田へと現地視察をした折に、「山を削って高台に住む所を置き、海岸沿いの漁港などまで通勤する。バイオマス(生物資源)を使った地域暖房を完備したエコタウンをつくる。福祉都市としての性格も持たせる」との提案を表したとの記事を見ました。
大前研一さん(原発関連で数少ない的確な情報を発信されている方々のうちの一人だと勝手に思ってます)も、住宅を高台へ移動させる内容の考えを示されていましたが、どうも同意できません。

土地の所有権が強く、行政の介入できる力の弱い日本では、スピードが求められる今、あまり現実的なプランとは思えません。

また、被災されている方々のごく一部の様子をテレビだけで見ていても、職住近接されている方々が多いと感じる方も多いと思います。漁村から発展してきた町や村であれば、それは容易に推測できること。漁業に限らず、被災された農業に携わる方々も同様なのは言うまでも無く、商工業に携わる方々に関してもそう簡単な話では無いのでは。
乱暴な話ですが仮に職住分離を行えたとしても、結局、利便性を求めて住まいを海辺なり平地に移動してゆくことになるだけのような気がします。

何より、その場で育まれてきた歴史・共同体と言う重要な存在もある。
そう単純に分離できるものでもないのでは無いと思うのです。
大切なのはそれらを踏まえた上で、選択肢の一つとして「元の場所に住む」事をそこに住まわれていた方々が選べる事が重要なのではないでしょうか。
高台に住むという選択肢は当然のこととしても。

しかし、これほどの被害を目の当たりにして、防災を高める事の重要性を考えれば、失われたものをそのまま再現することが良いとはとても言えません。
今回はっきりしたのは、やはりRC造の建物の津波に対する強靭さでした。例え内装や家具は流されてしまっても、建物の躯体は十分再利用に耐え得るものがほとんどだと思われます。そして、避難所には近さと高さとがとにかく絶対に必要であること。基本的な事の重要性を改めて認識した気がします。

それらから、政府に津波の被災地における住居の再建に関して、RC造に対する補助を行うなど、積極的な働き掛けを加えて行うべきだと考えますし、例えば4階建て以上の津波に倒壊しない建物が一定距離をおいて点在するように、都市計画上で誘導できないものかと考えます。

スマートグリットやバイオマスなど、新しい環境技術を用いる件は、被災された人々が生活を戻されたその後でも良いではないですか。逆に日本中の既存の町や村に、それらをどのように適応させて実施できるのか、その大きな試みを進める第一歩になることは間違い無い訳ですから。
ゼロから新しくエコタウンなるものを造り出すことは、データの蓄積などから必要だとは思うのですが、それはあくまで実験を主眼としたものであって、被災されたその地が理想を反映させた巨大な特殊解となる事は避けるべきだと考えます。

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